オレキシン受容体拮抗薬 特徴
これまで主に使われていた『ベンゾジアゼピン系睡眠薬』の特徴である筋弛緩作用や依存性が極めて低いを、というのが特徴です。
〇筋肉を弛緩させない
〇依存性が極めて低い
筋肉を弛緩させない
小規模ですが、睡眠薬毎の転倒リスクを比較した調査報告があります
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はその筋弛緩作用により転倒リスクが上昇していますが、オレキシン受容体拮抗薬の1つであるレンボレキサントでは転倒リスクが逆に減少した結果が出ています。
ちなみに同報告の中ではもう1つのオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントには目立った転倒リスクの増減はなかったと報告されています。
こちらは睡眠薬を内服している入院患者の転倒率を調べた調査結果です。ちなみにオレキシン受容体拮抗薬を内服していた方は80歳前後が多く、他の2剤はそれよりも若干若い75歳前後の方が多かったようです。
Z薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬の一種)及びオレキシン受容体拮抗薬では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(Z薬以外)と比較して転倒率が低くなっていることが分かります。
これらの結果からもオレキシン受容体拮抗薬は筋肉の緊張を緩める作用は極めて小さいと考えられます。これは転倒リスクだけでなく誤嚥リスクも低いということが推察されます。
依存性が極めて低い
実際にその依存性を調べた研究は見当たらないものの、その薬の作用から依存性はないものと考えられています。
オレキシン受容体拮抗薬はその名の通り、オレキシンの働きを特異的に抑える薬であり、他の神経伝達物質への直接的な影響はほとんどありません。そしてこのオレキシンという物質はアルコールや覚せい剤などの依存形成を促す働きも持っていることが判明しており、オレキシンの働きを抑えるこの薬は依存性をむしろ低下させるのではないかと考えられています。
オレキシン受容体拮抗薬の種類
日本では現在オレキシン受容体拮抗薬は下記の2剤のみです。
・ベルソムラ(一般名:スボレキサント)
・デエビゴ(一般名:レンボレキサント)
※ベルソムラ2.5㎎、デエビゴ10㎎の規格は、血中濃度が上昇する恐れのある一部の薬剤との併用時に用いられる用量になります。
2剤の使い分け
効果の違い
デエビゴの方がやや効果が強く、効果時間も長いと言われています。一方で中途覚醒の軽減効果はベルソムラの方がやや上回るという報告があります。そのため
・不眠の程度が強く早朝に覚醒しやすいタイプの方はデエビゴ
・不眠の程度は軽く、睡眠途中に何度も覚醒するタイプの方はベルソムラ
といった使い分けが考えられますが、使用経験上は結局その人その人の体質による影響の方が大きいという印象です。
ちなみに副作用については大きな違いはありませんが、より詳細を知りたい方はベルソムラ(スボレキサント)、デエビゴ(レンボレキサント)の添付文書を参照ください。
使いやすさ
使い勝手という点ではデエビゴの方に軍配が上がります。
・デエビゴは他の薬と一包化できますが、ベルソムラは光や湿度の影響を受け効果が変化する恐れがあるため個包装となっており内服時に手間がかかることがあります。
・デエビゴは用量調整の幅があり、ベルソムラは基本的に成人・高齢者で用量が固定されています(調整できないわけではないが推奨はされていない)。
・デエビゴは重い肝障害を患う方には使用できませんが、それ以外は基本的に継続可能です。一方でベルソムラは一部の抗生剤を使う際に使用できなくなり、適宜他の睡眠薬に変更しなければならなくなる恐れがあります。
併用はできるの?
作用の仕方はほとんど同じであり、併用は副作用リスクが高まるだけであるため勧められていません。
オレキシン受容体拮抗薬の作用
覚醒作用のあるオレキシンの働きを阻害することで、相対的に脳が休みやすくなる環境を整え睡眠を誘発します。
オレキシン受容体拮抗薬の注意点
・お酒との併用はしない
・用法用量を超えた服用はしない
いずれの睡眠薬にも言えることですが、お酒との併用は避けてください。アルコールの作用と混ざり合うことで脳の働きが過剰に抑えられ、記憶なくおかしな行動をする等のリスクが高まります。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較して安全性が高い薬ですが、薬を飲みすぎると翌日に眠気が残りやすくなりますので、用法用量を守った使用をお願いします。
脳機能に影響を与えるわけですから、完全に安全というわけではありません。他の睡眠薬と同様になるべく使用量を減らすようにし、薬に頼らず眠れるように並行して生活習慣の改善を行う努力は続けていきましょう。
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